コンラッドのことは大好きで、俺の名付け親だし、こっちに来てからの野球仲間だし、保護者のようで傍にいてくれて当たり前の存在で…
だからそんな事を言われてどう答えていいのかわからなかった。

「俺の部屋にいく?それともユーリの部屋?」

「…冗談、だよな?」

「冗談じゃないよ」

もちろん部屋に行くってことは、トランプするとか、お茶するとかじゃないってことは鈍い俺だってわかる。黙っているとコンラッドは俺の手をとり、引き寄せた。
コンラッドの顔がゆっくり近づいてくる。これがヴォルフラムだったら、男同士でやめろ〜と叫んでるところなのに…コンラッドの顔が近づいてきて嫌とか全然思わないし、反対に綺麗な瞳だな、なんて見入ってしまった。

「ユーリ」

コンラッドの息が俺の唇にかかる。

「うぉぉまぁぁえぃらぁ!!!なぁぁにぃぃしてぇるぅぅ」

もの凄い舌を巻いた怒声が聞こえてきてコンラッドの顔が俺から離れた。

「この尻軽!僕という婚約者がありながらコンラートと浮気するとは」

「してない!してない、まだ」

「まだ、してないだとぉ!!!!」

「あっ、いや言葉のあやと言うか」

「いゃーん坊ちゃん達がそんな関係だなんて」

チャチャを入れてくるヨザックにヴォルフラムはますます怒りで肩を震わしている。

「やだな、ヴォルフ、冗談に決まってるだろ」
 
「ふざけるなっ!!ユーリとペアになれなかったのは仕方ないが、札は貰うぞコンラート」

「えっ札?いつの間に!」

「通りかかったらドアに挟まっていたので」

「コイツは高みの見物でみんながあたふたするのを見て面白がるつもりだったんだ」

「そんな事ないよ」

「問答無用っ!!!」

「ちょっとマジ!!」
 
結局俺達はヴォルフラムの隙をついてホールに到着し、ダンスをどうにか披露して、天下一舞踏会を制する事が出来た。何故かサラがミス眞魔国に選ばれドタバタの中、幕を閉じたのだけど。

その夜、俺はなかなか寝付けなかった。体は疲れてるけど、頭は冴えてて寝ようと思っても全然ダメだ。それにどうしてもさっきの事が気になって仕方なかった。ヴォルフラムが来てうやむやになったし、ヴォルフには冗談だよとコンラッドは軽口を叩いていたけどあの時近づいた顔は冗談には見えなかったし、もしヴォルフラムがあの場に来なかったらどうなっていたんだろう。

俺は……どうしたかったんだろう。

「ああっ、くそっ」

俺は起き上がるとゆっくりベッドから抜け出した。




ドアをノックすると返事が返ってきて扉が開いた。

「陛下?どうしたんですかこんな遅くに」

「陛下って言うなよ名付け親。中、いい?」

「どうぞ」

室内は綺麗に片付いて無駄なものは置いていないシンプルな部屋だった。

「何かあったんですか」

「別に。なんか頭が冴えて寝らんなくてさ」

「何か暖かいものでも入れますね」

俺はベッドに腰掛けてコンラッドを見つめていた。
もう寝るつもりだったのかラフな格好に着替えている。
背が高くて肩幅も広くて、顔も声も格好いい。コンラッドに憧れてる人が結構いることを知ってるけど、俺が知ってる限りでは浮いた噂は一つもない。けど俺が気付いてないだけかも知れないし。

「どうぞ」

「ありがとう」

コンラッドが入れてくれた紅茶を一口飲と薔薇の香りが広がった。

「薔薇の紅茶?」

「眠れない時に飲むと良いらしいですよ。以前母が外国の土産と言っておいていったんです」

「ツェリ様が?美容にも良さそうだね」

「確かに。睡眠不足はお肌の大敵だからって言ってましたからね」

そう言って微笑むと俺のことをじっと見つめている。やばい会話が続かない。

「あ、あのさ天下一舞踏会って毎年やってたんだろ。去年はツェリ様が優勝したんだっけ」

「ええ。毎回優勝していたんで今回から晴れて殿堂いりしたんですけどね」

「あんたも毎年でてたの?」

「一応ね。グウェンダルやヴォルフラムも参加していたよ。けど誰も母には勝てなくてね」

「もしかして、ツェリ様も闘ってたわけ?」

「ええ、いろんな意味で最強でした」

想像すると俺の中のツェリ様像が壊れそうだったのでやめておいた。

「あのさ、コンラッドも参加してたんだよな。そん時のパートナーって…」

「ユーリも体験したとおりパートナーはその場で近くにいた人だから全然知らない人の時もあったよ。でも大体、俺は出入り口近くにいて、会場が暗くなったらすぐに外へでちゃっていたけど」

「けど、コンラッド狙いの子とか側にいて、暗くなったら、手掴まれたりする事だってあるだろ」

「俺狙いかどうかはわからないけど、ドアが塞がってて出られなかった時は、手を掴んできた人がパートナーの時はありましたね」

「で、どうしたの?」

「?」

俺の質問にコンラッドは首を傾げた。

「どうしたのって?何がですか?」

「その後、パートナーと」

クスッとコンラッドが笑う。

「そうだな、大抵はその場限りの関係で、名前すら覚えてないな」

軽くショックを受ける。そ…だよな。一夜限りの関係があったっておかしくないよな。爽やか好青年に見えるけど100歳は越えてるもん。人生経験は豊富だろう。聞くんじゃなかった。なんかあっさり言われちゃったけど、やっぱりさっき俺に言った台詞も一夜限りのおたわむれってやつだったんだろうか。

「ユーリ、なんか勘違いしてない?」

コンラッドが俺の隣に腰かける。

「えっ、いや、やっぱり大人だなぁと思って。俺はまだ体だけの関係とかって
よくわかんないし、やっぱ好きな人とじゃないとそーゆーこと出来ない」

「母が札を取った時点で不参加しする人が多かったし、俺がやんわりパートナーを説得してひとりで、高見の見物してましたよ」

「ひとりで?」

コンラッドはこくんと頷いた。

「残念ながらユーリが想像してるような事は何も無かったよ」

「べ、別に、俺は」

コンラッドはニコニコと微笑んで俺を見ている。

「ユーリが部屋を訪ねてきてちょっと緊張してるんたけどね」

「え――――――っ。んなわけないだろ。大体それでどこが緊張してんだよ。むしろ余裕って感じじゃんか」

「さっきは邪魔が入ったけど、こんな遅くに俺の部屋を訪ねてきてくれて、俺の誘いにのってくれたのかなって、これでもドキドキしてるんだけど」

俺はカーッと頭に血が上った。そんなことを言われ、俺の方が一気に緊張する。

「えっと、その、さっきどう言うつもりだったのかは聞きたいんだけど誘いにのったわけでは!!」

コンラッドの顔が近付いた。けどその顔からもう微笑は消えている。

「言ったでしょ。冗談じゃないって。俺はユーリと一緒にいたかった」

そのままゆっくりと顔が近づいてくる。俺は動くことが出来なかった。だって今コンラッドが言ったことが本当なら、俺とその、そーゆーことしたいって訳だよな。けど俺が嫌だと言えばコンラッドは止めてくれる。しかし俺が何かを言う前にコンラッドが寸前で動きを止めた。

「嫌じゃないの?」

「…イヤならちゃんと言うよ」

唇に暖かいものが触れて直ぐに離れた。正直、え?っくらいの出来事でよくわからなかった。

「ユーリ」

俺がキョトンとしているからなのかコンラッドが苦笑いしてる。

「キスしてる時には凝視しないで目を閉じて欲しいな」

「ご、ごめん。けどなんかよくわからなかった」

「なら次は目を閉じて集中して」

コンラッドが俺の頬を撫でる。もう一度コンラッドの顔が近づいてきて、俺の好きな銀を散らした瞳が閉じられる。今度は俺も目を閉じるとさっきより長く唇が触れ合った。
コンラッドが今まで以上に近くに感じられる。
ゆっくりと唇が離れて再び俺の好きな瞳が微笑んでいる。

「どうでした?」

どうでした、なんて言われても今の行為が凄く恥ずかしくなって俺はコンラッドの胸に
頭をつけたまま顔を上げれなかった。顔が熱い。

「ユーリ、好きだよ」

耳まで赤くなってる俺にこれまた良い声で囁いてそのまま軽く抱き締められる。

「俺も」

小さい声で返答すると抱き締められていた腕に力が入る。

「俺がどんな顔してるかわかる?」

抱き締められてるからコンラッドの顔は見えないけど…

「スッゴい鼻の下伸ばしてる」

照れ隠しにそう答えた。

「あたり」

暫くそのまま抱きすくめられていたが、コンラッドが体を離す。

「もう遅いですし、明日もありますから休んで下さいね」

確かに深夜2時を回っている。

「それとも続きをします?」

「寝ますっっ!お休みコンラッド」

俺は慌ててコンラッドから飛び退き扉へ向かった。キスでさえまだ未熟者なのにそれ以上なんて想像も出来ない。
扉を開けて出て行こうとした俺は呼び止められて扉の前で振り返った。コンラッドは少し背を屈めると、軽く俺にキスをして

「おやすみ、ユーリ、良い夢を」

と耳元で囁いた。

まだ慣れない俺はどもりながら「おやすみっ」と答えると、走って自分の部屋に戻ってベッドへ飛び込んだ。

まさかファーストキスの相手が男でしかもコンラッドだなんて....しかし全然嫌じゃないし、むしろ好きって言われてかなり嬉しかったりする。しかも、「俺も」なんて言ってしまった。もしかして俺たちって両想いでラブラブ??
眠れなかったから、はっきりさせて眠るためにコンラッドの部屋に行ったはずなのに、余計眠れなくなった。

まさか、綺麗なおねーさんとか、ちょっと気の強い同級生とかじゃなくって男を好きになっちゃうなんて!!
そしてさっきのことを思い出し、俺は一人で赤くなって、頭から布団をかぶった。
明日からどんな顔して合えばいいんだろう....

でも、さっきの出来事が、夢じゃないようにと願って俺はねむりについた。

 

2008/4/14

PS2の天下一舞踏会のコンラッドの台詞から妄想が広がりまくりました。
でも有利、本当は初キッス、フリンさんだよね。(口移し)だけどさ。

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