今日は朝から雨模様で道のあちこちには大きな水溜まりが出来ていた。
放課後、渋谷に呼出されマックで待ち合わせをする。関係ないけど関西じゃマクドと言うらしい。
渋谷はアイスコーヒーを飲みながら外に目をやっていた。雨で今日の屋外でのプロ野球は中止だ。
心の中で止んでくれと願っているのが手にとるように判るよ。
「どうしたの急に呼びだしたりしてさ」
「村田、夏休みまたバイトしないか」
「バイト?」
「そう。やっぱ夏休み中のプロ野球の試合見に行きたいし、自分の道具とかも新しいの欲しいし」
「んじゃ、また」
「だめ、却下」
まだ最後まで言っていない。
「まだ何も言ってないよ」
「村田のとこのペンションは却下」
「何でさ」
「近場でいいよ。だって間に野球見に行けないじゃん」
「じゃ、何のバイトがいいの?」
「えーと肉体労働かな〜。バイトで筋肉つけて、お金もらえるって最高じゃない」
「それは僕が却下。大体僕は肉体派より頭脳派だもの」
「えー」
「それに今回は夏期講習があるからそんなに長い間は無理だし。やるなら短期、高収入」
「そんなバイトないだろ〜」
「結構探せばあるよ」
マックのカウンターの横に置いてあるアルバイト情報のフリーペーパをテーブルに広げる。
「ほらこれとか」
「どれ?日給1万円。貴方はかかってきた電話の人と楽しく会話をするだけ。
気が合えば外出もOK!ってテレクラじゃんかっ。俺、口下手だしっ」
「冗談だよ」
大体突っ込むとこそこじゃないし。
「あっ、僕そろそろ塾の時間だ。渋谷に合うバイト探しておくよ。僕も、渋谷もできて高収入」
「変なのやだかんな」
「大丈夫。僕に任せなさい」
だからしんぱいなんだよなどとぶつぶつ言っている渋谷を置いて僕は店を出た。
実は一つ面白そうなバイトがあるのだ。
早速電話を入れると面接に来て下さいとの事。
「高収入で肉体労働程々で。何より魔王としての品格が上がるバイトなんて早々ないよ、渋谷」
僕は雨の中鼻歌を唄いながら塾の扉を開けた。
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