「Happy new year、コンラッド」

「Happy new year、yuri」

年が明けての眞魔国の訪問。有利がコンラッドに挨拶すると流暢な返事が返ってきたのと
同時に軽く頬へキスされ、慌てて後ずさった。
当の本人は何事もなかったかのように爽やかな顔をしている。
有利が口を開くよりも前に背後から怒鳴り声が響く。

「ユーリ、なんだっ今のはっ!!」

金髪の美少年、ヴォルフラムが有利の胸ぐらを掴みかかり至近距離で睨みつけてきた。

「く、苦しいっ、ヴォルフ」

「よせ、ヴォルフラム、陛下を殺す気か!」

コンラッドが間に入り、有利はヴォルフから逃れることが出来た。
しかしヴォルフの怒りは収まらず今度はコンラッドを睨みつける。

「ユーリは僕の婚約者だ。わかってるのかコンラート!!」

「もちろん」

「だったらなんだっ今のは」

「今のって?」

コンラッドはちょっと考えて、あぁと呟きニコッと笑った。全く悪びれた風はない。

「地球の挨拶だよ」

「挨拶だぁ〜?」

「そう」

さらりと言ってのけるコンラッドに有利は唖然としてしまう。

「そうなのかユーリ」

猜疑の視線で有利を睨みつける美少年には鬼気迫るものがある。とても違うだなんて、
言えない雰囲気だ。

「あっ、ええと確かにコンラッドがいたアメリカじゃ挨拶だけど」

「けどなんだ!!」

有利の住んでいた日本でそんな風習はないと言えず

「なんでもないです」

と肩をすくめた。

「なら」

その肩を掴まれて、近づいてきた顔に慌ててしまう。

「な、何!!ヴォルフ、顔近すぎ!」

「僕も挨拶するぞ」

一瞬思考が飛ぶ。

「えっ?こんにちは」

「違うっ!!僕も地球式の挨拶をしてやると言ってるんだ」

冗談じゃない!!

「遠慮しとく!!」

「婚約者の僕がしてやるんだ。ありがたく受け取れ」

「い〜や〜だぁ〜」有利はヴォルフを振り払って逃げ出した。

「あっ待て、ユーリっ!」








「あれ?ウェラー卿、渋谷とフォンビーレフェルト卿はどうしたの?」

コンラッドが指さした先に走り回る二人の姿がある。

「いつもの痴話喧嘩みたいですよ」

その痴話喧嘩の原因は素知らぬ顔で答える。

「そう、新年早々仲が良いね」

「そうですね」

「ところで、明けましておめでとう、ウェラー卿」

「おめでとうございます、猊下」

ニコッと笑う村田にこれまたコンラッドもニコッと笑みをかえす。

「僕には米国式の挨拶、してくれないの?」

「猊下のお育ちの日本ではそのような習慣はなかったように思いますけど」

「ふーん、渋谷限定の挨拶なわけだ」

「そうですね」

けっ、と村田は心のなかで舌打ちする。

「はーい、じゃグリエがぁ、その何とか式の挨拶しますよん、猊下vv」

「僕、日本人だから遠慮しとく」

そしていまだ、揉めている二人の間に入っていった。

「いやーん。猊下ったら、照れ屋さん」

くねくねして女性モードになっているヨザックを一瞥する。

「本当にそう思ってるのか、グリエ」

「もっちろんvついでに猊下ってば可愛い〜」

「幸せだな」

「ところでっ隊〜長〜、猊下が近づいてんの知ってて、坊ちゃんにキスしたろ」

「挨拶だ」

「ふふーん。じゃ俺も今度挨拶坊ちゃんにしてみよ」

カチッとコンラッドが剣をならす。

「うへっ冗談だっての」

「お前はどこまで冗談かわからないからな」

「しっかし、隊長にしては積極的じゃない。しかも婚約者の三男坊の前でさ。三男坊が
あおられて既成事実つくったらどうすんの〜?」

心配そうな内容とは裏は背に面白そうにヨザックが話す。

「ヴォルフは別に問題はないが、黒髪メガネっ子の腹黒と、色白メガネっ子の腹黒は
気をつけないといけないからな」

真剣な顔でコンラッドが答えた。

「もしもーし誰ですか?そのメガネっこ軍団」

コンラッドはヨザックをチラッと見てから何も言わず歩きだした。

「まぁーったく、誰が一番腹黒なんだか」

腹黒いライバルが多い中、今年はしっかり意思表示をしなければとこれまた腹黒い
コンラッドは新年の抱負を心に刻むのであった。

 

2008/1/31
勝利は腹黒ではないけどおばかさんだと思ってます。

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