「たまに来るとやっばりこれなわけね」
相変わらず執務室に山積みになった書類へ片っ端からサインしていく。
「そもそもお前がずっとここにいれば何の問題も無いじゃないか」
ヴォルフラムが腰に手をあて俺を睨み付ける。ヤブヘビだ。
「まぁまぁヴォルフ。陛下だってあちらの生活があるんだから」
「陛下って言うな名付け親」
「はい、ユーリ」
「そこおっ!見つめあってイチャイチャすんなっ!」
「してないだろ」
そこへ村田が入ってくる。
「あれ、相変わらず痴話喧嘩、渋谷」
「誰が痴話喧嘩だよ」
「夫婦喧嘩は犬も喰わないっていうよ」
「……」
「猊下、その手に持たれているのは何ですか?」
さり気なくコンラッドが話題を変えてくれる。
「ああ、これ?フォンビーレフェルド卿とフォンクライスト卿から頼まれていたやつ」
「ヴォルフとギュンターに?」
俺達は模造紙の前に集まった。
「これって…?」
眞魔国語でかかれてるから全てを理解出来ないが、一緒に描いてあるイラストには見覚えがある。
「これ、ドラキュラに、フランケンシュタインに、狼男?」
「当たり。これは地球で代表的なモンスターだよ。他にも半魚人とかキングコングとかチャッキーとかいるけど」
「キングコングは微妙だけどチャッキーは違うだろ」
「で、そのモンスターが一体何故ここに描かれているのですか」
「うん。地球にはハロウィンがあるだろ。この前眞魔国に来た時、フォンクライスト卿とフォンビーレフェルド郷がハロウィンについて聞いて来たんだよ。そしたら眞魔国のイベントでやりたいからって」
「そうだぞユーリ。地球で魔族の祝い事やっているなんて良い心掛けじゃないか」
「何か勘違いしてないか。そもそも魔族のお祝い事じゃないし、モンスターなんて関係ないだろ」
そこへギュンターが飛び込んで来た。軽やかな身のこなしだ。
「陛下、如何ですか」
いつもの服装とは違い、黒のタキシードにマントをつけている。美形は何を着ても似合う。
「凄い似合ってるけどどうしたの。その格好」
「猊下が描いて下さったのを元に作ってみました。ハロウィンの日には黒を身にまとい人間を襲うと伺いました」
「村田ぁ!変な知識を植え付けるなっ!ギュンター、違うぞ」
「違うのですか?」
「違う!なぁコンラッド」
「そもそもハロウィンは10/31に行われる、収穫祭です。子供達がお化けの格好をして近所の家にお菓子をねだりに行くんですよね」
「そうそう」
「まぁそんなことはどうでもいい。今回はそのハロウィンとやらを眞魔国の総力をあげて実施する」
「実施する…って一体何を」
「本当は、魔族の強さを人間に知らしめるため人間の町を襲うと言う案がでたのですが」
「ダメダメ絶対駄目っ」
「って陛下がいうのは判りきってるから、血盟城の中で仮装大会をすることにしました」
「へぇ、面白そうだな」
「だろvvでそのプランをたてるために作ったんだ。んじゃ早速」
「どれどれ」
「ダメだよ渋谷」
「へ?何で?」
「臣下が決めるんだから君は当日まで楽しみに待っててくれればいいの」
「えーっ、何でっ文化祭みたいなもんじゃん。クラスメートが一致団結して作り上げてくのに俺ハブかよ」
「君には他にやってもらいたいことがあるから、内容がバレちゃ困るんだ。ある程度案が決まったら話すからさ」
「うー」
「ユーリ、キャッチボールでもする?」
「行くっ!じゃ、村田、後で絶対教えてな」
「了解」
ナイスフォローと心でつぶやきながら、村田はひらひらと手を振り笑顔で答えた。
「けどさっ、俺もやっぱ参加したいよな。最初から」
「皆、陛下に完成品を見て喜んでもらいたいんですよ」
「その気持ちは嬉しいけどさぁ」
コンラッドの投げた球がグローブに良い音をたてておさまる。その振動が小気味良い。
「仮装って事はコンラッドもするの」
「うーん。ですかね」
「そっか、楽しみ」
「当日は何かゲームをするらしいですよ」
「ゲーム?」
「ええ、詳しい内容はまだ聞いていませんけど」
「頭使うんだったら困る」
「大丈夫ですよ。その時は俺も一緒に考えますから」
「頼りにしてるぜ」
「はい」
それから二週間後、眞魔国のハロウィンがやってきた。
結局詳しい話を村田から教えてもらえないまま当日の朝を迎えた。
「コンコン」
「開いてるよ、コンラッド」
しかし入って来たのは違う人物だった。
「悪いねウェラー卿じゃなくて」
「村田?どうしたの」
「渋谷に今日の衣装選んでもらおうと思って。はい」
「この中から?」
「そう取り合えず。んじゃゲームの説明するね」
村田は俺に地図を手渡した。
「血盟城の中にある宝を全部見つけ出して取って来たら渋谷の勝ちっていう簡単なゲームだよ」
「宝探し?」
「そう。ただし、そう簡単には取らせないけどね。罠や仕掛けは盛り沢山。もちろん宝を手中に納めたからって安心しちゃだめだよ。僕は特設本部にいるから何かあったら報告ちょうだい。じゃもう開始だからさ」
「えーっ、もう!」
俺は村田が持ってきた衣装を物色し始めた。
「それから、渋谷」
急に村田の顔が真剣になった。
「何?」
「自分の身は自分で守るんだよ」
「なんだよいきなり。血盟城に刺客がいるみたいじゃんか」
「ならまだいいんだけど。顔はマスクで隠しておいた方がいいよ。廊下暗いから蝋燭持って歩いてね。じゃ頑張って」
「ええっ!ちょっと待て」
俺の叫びも虚しく村田は部屋を出て行ってしまった。仕方なく残された衣装から黒の被りモノと困った系のマスクをつけた。
「確かに誰かは判らないけどさ。モルギフだなこれじゃ」
しかし、村田の言ってたこと引っ掛かる。
「自分の身は自分で守れって、コンラッドはどこいるんだ?えっと蝋燭は」
明かりをつけて地図を持ち廊下にでる。
「うわっ、暗い。本格的」
まるでお化け屋敷だ。窓は黒いカーテンで覆われ、外からの明かりが入ってこないように遮断されている。一応点々と蝋燭の明かりが付いているとはいえ、奥に進むのをためらってしまう。そもそも世界各国のお城には血なまぐさい歴史がてんこ盛りだ。
「何か出そう」
そろそろと厨房へと続く廊下を歩く。宝物が隠されている場所の一つは厨房だ。その隣りの部屋でボソボソと声がする。可愛い魔女が井戸端中のようだ。
「ねぇ聞いた、今日の宝探しゲーム」
「陛下と閣下達が参加してるやつね」
「なんでも、優勝者には陛下からキスのお祝いがあるらしいわよ」
「え〜っっ素敵。私も参加したかったわ」
「誰が優勝するのかしら。これでトトも変わってくるかも」
「ヴォルフラム閣下もギュンター閣下も張り切ってたものね」
聞いてねーっっ!!!!俺は廊下で青冷めた。大体俺が勝ったら何くれるの?今の話だと参加者にヴォルフとギュンターがいることには間違いない。グェンやコンラッドも参加してるんだろうか。
考えていると背後から足音が聞こえる。俺は慌てて厨房へ飛び込んだ。蝋燭の炎を消してテーブルの下に隠れる。壁につけられている蝋燭の炎で辛うじて部屋の中の様子が見てとれた。
(うっ!!)俺は慌てて自分の口を塞いだ。危うく悲鳴をあげてしまうところだった。
明かりの中にぼんやりとジェイソンが浮かびあがった。怖い、怖すぎる…
アレと戦えというのだろか。何か方法は!俺は地図を手探りでなぞっていく。
「何か…書いてある。えっと厨房のテーブルの下のボタンを押す。これかな?」
テーブルの足に出ていたボタンを押してみる。
ガコガコと変な音がしたかと思うとジェイソンが空中に浮かんだ。
「ひゃあっ〜な、何ですかこれはっ!」
「ギュンター?」
「その声は陛下っ!」
飛び出した俺の前ではジェイソンが逆さ吊りになっていた。足にロープがかかっている。
「フォンクライスト卿、失格〜」
「村田」
ハリーポッタの服装の村田が厨房へ入って来た。
「罠に掛かったら失格」
「ということはもう陛下の口付けは受けられないっと言うことですか」
逆さ吊りのままジェイソンは暴れている。
「初めから与える気はねぇよ!!そうだ村田っ!なんだよそのルール聞いてないぞ」
「あれ?言ってなかった?ごめん、ごめん」
「ゴメンじゃすまないだろっ!!」
「嫌なの?」
「嫌に決まってるだろう!!」
「ゲームを盛り上げるための趣向なのになぁ。でも嫌だったら渋谷自身が勝つしかないよ」
「……わかった。やってやろうじゃないか」
「よっ、それでこそ渋谷有利、原宿不利」
最後のフレーズは余計だ。
「さっき渋谷に渡した地図は他の人より有利な情報が書いてあるからね。うまく利用して宝をゲットしろよ」
「わかった。ギュンター、これ貰ってくから。サンキュー」
ギュンターの下に転がっている箱を拾うと俺は厨房を出た。
「あぁっ陛下っ!行かないで〜。えっ!?猊下まで。私を私を降ろして下さいー」
「次の場所はと」
宝の場所を確認して今度は図書室に向った。ゆっくりと大きなドアを開けるとキキーッとさびた音が辺りに響く。滑り込む様に中に入り、壁にくっついて辺りを探った。確か宝の場所は6つ目の棚の6段目。6つ目の棚を覗きこんだ時急に目の前が明るくなった。
「誰だ」
声に聞き覚えがあるがくぐもっているため聞き取りにくい。明りに浮かぶ姿は先程のジェイソンと戦ったことのあるフレディだった。小さな火の玉が浮かんでいる。
まるで本当に悪夢の中にはいってしまったかのような錯覚に陥る。村田っリアルすぎんだよっ!!俺は一歩後ずさった。
「宝を…一つ持っているのか。こっちに寄越せ」
俺はブンブン首を横に振る。フレディは自慢の指をカチャカチャと鳴らした。
「ならば力ずくでも貰う」
フレディは俺に襲い掛かってきた。あわててしゃがみこんで攻撃を避ける。本棚の本が大きな音を立て数冊床へ落ちていった。
あんなので刺されたらたまったもんじゃない!!
俺は地図に書いてあった罠の場所を思い出す。本棚を背後にじりじりと移動していった。
「往生際の悪い。貴様が誰か知らないが、ユーリの唇は誰にも渡さんッッ」
ってヴォルフラムかよっっ!!
俺は目的の棚を目指し、1冊の本を抜き出してすぐに棚の間から離れる。ゴゴゴゴっと音がし、本棚から一斉に本が襲いかかってきた。棚の間にいたフレディは本の下に生き埋めになった。激しい音の後、図書室は静まりかえった。
「生きて、るよな」
「なんだこれはーっっ重いっ」
山積みの本の下から怒鳴り声が聞こえる。
「大丈夫みたいだな」
コロッと足下に落ちて来た宝箱を拾い上げる。
「あと二つかな」
俺は叫び声を無視して図書室のドアを閉めた。次は執務室。執務室の扉をゆっくりと開ける。
「ひゃ!」
誰もいないと思っていた部屋の中の窓際の机に人が座っていた。
「誰だ」
こちらを向いた男性が低い声で問い掛けた。何故かグレーに縦縞の入った着物と袴。手に日本刀を持っている。
「グウェンダル!?」
「ユーリか?」
俺はマスクを取った。し、渋すぎる。
「どうしたの、その格好は」
「うむ。猊下が用意してくれたのだが、どうも胸元がスースーするし、動きにくい」
「でも似合ってるよ、意外と」
「…そうか」
「もしかして、ここにグウェンがいるってことはグウェンもゲームに参加しているの?」
「いや、私は興味がないのだが猊下に言われてな。ほら」
グウェンダルが宝をほおり投げて来たのを胸元でキャッチする。
「ありがとう」
「最後まで気を抜くな」
「ん、わかってるって」
俺はマスクを再び被り廊下にでた。何事もなく3つ目をゲット。
「えっと、あと一つ」
俺は地下へ続くの階段を降りていった。地図を照らしながら進んで行き、幾つかの角を曲がる。
「本当にこっちなのか?」
城の地下には昔から拷問場とか牢屋とか、怪しい隠し通路や部屋があると決まっている。暗い地下で1人歩いて歩いているとどんどん不安になってきた。しかもなんだか白い人骨の様なものまで点々と転がっている。
もう引き返そうと思い始めた時、少しひらけた場所にでた。暗くて隅までは判らない。
「お待ちしていました」
いきなり背後から話し掛けられ跳上がるほど驚いた。振り向くとタキシードにシルクハット。黒のマントに白いマスクをかけた人物が立っていた。
「最後の宝はあんたが持っているのか」
「はい」
「ただじゃ…くれないよなやっぱり」
「そうですね。私を倒していただければ。そんな困った顔をしないで下さい」
「いや、もともとコイツこんな顔だし」
マスクの男は剣を俺の足下に落とした。手にしっくりくるその剣を両手で握りしめ相手に向っていった。
「うおおおっっ」
キンッと剣のぶつかる音が響く。マスクの男は軽々と俺の剣を受け止めている。力の差は歴然だ。何度も向っていくがその度に軽く流される。
「はぁ、はぁ」
俺は肩で息をしながら剣を地面に突き立て体を支える。しかもマスクをかけているせいで呼吸もままならない。
「勝てるわけないじゃんか!コンラッドっ」
俺はマスクを取ってマントの男に叫んだ。
「あれ、いつからバレてました」
「最初っからだよ」
背丈や体つき、そして何よりその声ですぐにわかった。大体、判んないなんてありえないだろ。コンラッドもマスクを取り、嬉しそうに微笑みながら俺に近付いてきた。
「だいぶ剣筋は良くなりましたけど脇はもう少し締めた方が良いですね。はいどうぞ」
コンラッドは俺に小箱を手渡した。
「俺が負けたのにくれるの?」
「陛下が今夜のパーティの時に皆の前で俺にキスをくれると言うなら別ですがね」
「んなこと出来るわけないじゃん」
「ですから」
受け取ろうと伸ばした腕をとられコンラッドの胸の中に引寄せられた。
「今もらおうかな」
コンラッドが俺に口付けてくるのを目を閉じて受け止めた。
「ん……んむむ…っ」
最初は軽く重なるだけだった唇が深いものに変わり、舌がが入り込んできた。抵抗しようにも後頭部を押さえられ、腰もホールドされて身動きが出来ない。抗議の声は全て舌ににからめとられる。
「んぁ…はぁ」
頭が霞んでくる。コンラッドはちゅっと音をたてて唇を離した。
「ユーリ、壮絶に色っぽいね」
「な、何言ってんだよっ」
顔が赤くなってるのが自分でもわかる。またも近付いてきたコンラッドの口を俺は手で塞いだ。
「村田に報告行かないとゲーム終了になんないだろっ」
理由をつけて拒否するがまたキスされたらそのまま流されちゃいそうで俺は焦っていた。しかし、今度はあっさりと体を離してくれる。
「残念ですけど、この後の準備もありますからね」
とりあえず俺はほっと安堵のため息をついた。
行きはあんなにオドオドしながら通った道も、安心して通ることが出来る。帰りも1人で帰るんじゃなくて良かったよ。
「村田、見ろ。全部取ったぞ」
俺はエッヘンとばかりに腰に手をあてて宝の小箱を渡した。
「お疲れ様。ウェラー卿は手を抜いたんじゃない?」
「そんなことないですよ。1人で怖い思いをしながら待っていたら、マスクのお化けが出て来たんでびっくりして本気で戦ってしまいました」
わざとらしいんだよ…聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。
「まぁ、想定内だったけどさぁ」
「あっ、ギュンターとヴォルフは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。フォンボルテール卿と二人にはパーティ会場に移動してもらったから、渋谷も着替えたら行っといで」
「また着替えるの?」
「だって埃まみれだし、魔王が顔隠してちゃダメだろ。部屋に用意させておいたから」
「へいへい。コンラッド、行こ」
「はい。では猊下また後で」
俺は自室に向かった。部屋の中は衣装部屋の様に移動式のハンガーが持ちこまれ服が並んでいた。
「すげー量」
殆どは黒い服ばかりだけど中にはカラフルな物も混じってる。
「これ……」
スキー競技の時に着るようなぴっちぴちの服を手に取る。
「エヴァ、しかもレイかよ。村田こういうの趣味なのか」
「陛下これなんてどうですか?」
一緒に物色していたコンラッドが服を引っ張りだしてきた。
「どれ?ってコンラッド、これ女物じゃんか!何考えてんだよ村田は」
「でも陛下に似合いそうですよ」
「陛下って言うな名付け親」
「ちょっと着てみません?」
ニコニコしながらコンラッドが服を広げる。
「な、何言ってんの!?コンラッド」
「ダメですか?」
笑顔が消えてシュンとなる。なんだか俺が意地悪してるみたいな気持ちになる。
うー。
「ちょっとだけだかんな。すぐに脱ぐからなっ」
俺も甘い。好きな奴から頼まれたら嫌だって言えないことがつくづくわかった。
誰かが入ってこないようにドアに鍵をかけ、手渡された服にいそいそと着替える。その間コンラッドはニコニコと俺を見つめていた。
「サイズぴったりだよ」
服装に無頓着な俺が判るぐらい生地は上質だ。ミニのスカートはふんわりと広がるようにギャザーがはいっていて、上着は前に白い生地が使われ小さな飾りボタンがついている。襟と袖にはゴージャスなレース。それにエプロン。
誰がみてもメイドさんだ。
「可愛いよユーリ」
こんな格好で可愛いなんて言われても恥ずかしいだけだ。
「うっわーハズいもう脱ぐ。コンラッド、背中のボタン外してっ」
コンラッドは背中に回ってボタンを外し始めた。
「…!?ちょっコンラッド!」
少しボタンの外れた首筋にコンラッドが唇を這わせる。そして左手が器用にスカートをたくしあげて直に太股に触れる。
「ん………んっっ!」
振り向くとそのまま口を塞がれ文句は閉じ込められてしまった。顎に添えられていた手が前に回り、コンラッドは胸を触りはじめてきた。
「ユーリ、ここにも飾りボタンがあるよ」
俺は真っ赤になる。
「やぁ、違…う、はぁっ」
胸の先端を摘まれてビクッと俺の体が反応する。いつの間にか下着は片方の足下に落ちていた。
「ん…やぁ、コンラッド」
鼻にかかった甘い声。こんな声出す気はないのに、コンラッドの指が俺の体に触れていくと、まるでスイッチが入ったかのように自動的に吐き出される。
立っていられなくなりコンラッドの腕にしがみつくと抱き抱えあげられ、次に降りた場所はベットの上だった。俺は最後の抵抗を試みる。
「着替えてパーティ行かなきゃだろ!」
「充分間に合います」
コンラッドが俺を片手でベットに押さえ器用に上着を脱ぎ始めた。
「コンラッドだって着替えんだろ!!」
「はい、でも脱がないとね」
だからって俺の上で脱ぐなぁ―――っ。
「大体何のモンスターなるつもりだよ」
コンラッドはちょっと考えた後、ニコッと笑い耳元をペロリと舐めた。
「WOLF MAN」
昔お袋が歌っていた、男は狼なのよ〜気をつけなさい〜♪というフレーズが頭をよぎった。
結局俺は服を選ぶどころか全部脱いだ挙句、ベットに力尽きて横たわっていた。
「ユーリ、そろそろ準備しないと」
誰が準備の邪魔したんだよ。のそのそと起き上がる。
「適当でいい」
「じゃあさっきのメイド服を」
「却下!!!」
赤くなった俺を見てくすくすとコンラッドは笑っている。
結局、黒のタキシードに、シルクハットと黒マントの定番ドラキュラの正装にすることにした。コンラッドにリードされパーティ会場へと急ぐ。
「今夜は無礼講ですって。楽しんでくださいね」
「なんかアメリカとかの卒業パーティみたいだな」
眞魔国での楽しいイベントがまたひとつ増えていく。これから先、もっともっと増やしていきたい。
俺はわくわくしながら会場の扉を開けた。
END
2006/10/20
どのキャラクターに何の格好させようかなぁと考えました。
取り合えずはお面つけて顔隠してるモンスターをと。フレディお面じゃないけどね。
ブラウザを閉じてください。
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