血盟城の執務室の窓からは雲一つない青空がどこまでも続いていた。こんな日は外で野球をやるに限るのに.....

「なぁギュンター、ちょっと休憩しない?」

歴史の本を片手に先ほどから隣につきっきりの教育係を上目使いに見る。

「陛下、私の胸を鷲掴みにするような瞳で訴えられてもこのギュンター、そのお言葉に従うことはできません」

「だって外はこんないい天気なんだよ。野球日和じゃんか」

有利は立ち上がって窓の外を眺める。城の外でこちらに向かって小さく手を振りにっこり微笑むコンラッドと目が合う。有利は頷くと一度席に戻った。

「なぁギュンター、俺、喉が乾いちゃったよ。この中、少し暑いだろ。お水持ってきてくれないかなぁ」

「仕方ないですね」

テーブルの上に置いてある水さしに手を伸ばそうとしたギュンターに

「違う、違う」

とジェスチャー入りで訴える。

「その水、もうぬるくなっちゃっただろ。新しいの貰って来てくれないかな」

駄目押しに「もう暑くって」と服のボタンを第2ボタン辺りまで外す。

『ぶーーっっ』

「す、すびばせん、へいが。ちょっとじづれいします」

ギュンターは水さしを持ち、ギュン汁を出しながら扉の外へ飛び出していった。

「......コンラッドの言った通りだな…」

中途半端に開いたドアを見て驚きつつ立ちつくしてしまう。

「こうしちゃいられない。今がチャンス!」

有利はバルコニ―に出るとそこで待機していたコッヒ―に「宜しくな」と言って縁に足をかけた。
フワリと体が浮き上がり、コッヒ―は有利を血盟城の門まで運ぶとユックリと地上へ降ろし、再び舞い上がっていった。

「ありがとなぁ、コッヒ―」

有利はコッヒ―におおきく手を振る。

「そんなに大きな声を出すと見つかってしまいますよ」

「コンラッド」

有利は笑顔でコンラッドに駆け寄った。コンラッドは手に持っていたフードを抱き抱えるように有利に被せる。

「作戦大成功!しっかし、よくあんな計画で脱出出来たよな」

「陛下のお色気にかかればイチコロですよ」

「い、色気って…」

がくっとうなだれてしまう。

「陛下はご自身の魅力を判っていないから。正直、今回の作戦が裏目にでて襲われてしまったらどうしようかとハラハラしていました」

「お、襲われたらって…」

馬に有利の体を押し上げながら恐ろしいことを爽やかな笑顔さらっと爽やかに言ってのける。有利が馬にちゃんと乗ったのを確認し、コンラッドもその後ろに飛び乗った。

「ギュンターやヴォルフがいつ行動にでるかいつも心配で気が気ではありませんよ」

「ありえないよ〜」

「いーえ、ありえます」

きっぱりと言い切られる。有利は、はぁ、と小さく溜め息をついた後、気をとりなおした。

「とにかく、バザー終わっちゃう。早く行こう」

「はい」

コンラッドは馬を城下町に走らせた。

城下町では年に数回行われているバザーの真っ最中。大通りにはところ狭しと色とりどりの物が売られている。

「すっごい人。縁日みたいだな」

「縁日?」

「日本の夏祭りとか秋祭りに神社とかに出店がでるんだよ。こーんな感じで。あっ、なんだあれ」

クルクルとよく動く大きな瞳が何かを見付けて駆けていく。その姿を微笑ましく追いながらも辺りに怪しい人物がいないか鋭く目を光らせた。部下が数人民衆に隠れている。

「ねぇコンラッド、コレは何?」

「これは赤ちゃん用の玩具ですよ。ここをこうして」

樽状の箱のネジを回すとカタカタと音がしてニョキニョキ手と足が飛び出した後、走り出した。

「な、なんだっ!」

そして立ち止まるとニョキッと頭をだし大きな音をたてて真上に頭が吹っ飛んでいた。頭はそのまま地面に勢いよく落下してきた。

「うっわぁっっ!!これ、危ないじゃんかっ。こんなの赤ちゃんに渡しちゃ駄目だよっ」

有利は目を白黒させコンラッドにしがみついていた。おもちゃというレベルではない。

「魔族の伝統的な玩具ですよ。まぁこれはもうちょっと年齢層が上ですけど」

有利のずれてしまったフードを被せながら答える。

「何かあったのか」

大きな音を聞きつけ軍服を来た男が走りよって来る。

「ちょっと玩具をいじってしまっただけだよ。大丈夫」

「はっ、閣下」

私服を着ていたため直ぐにコンラッドと気が付かなかった様だ。コンラッドは口許に人指し指を当てた。部下はコンラッドが肩を抱き、横で下を向いている人物をみた後、にっこり微笑んだ。

「今日は非番でしたか。楽しんで下さいね」

と頭を下げて行ってしまった。

「やばいやばい、顔、見られてないよな。ばれなかったかなぁ」

「大丈夫みたいだよ。でもデートしてるとは思われたみたいだね」

「で、でーとぉ!!」

「俺は嬉しいけど。はい」

コンラッドが手を出してくる。

「迷子になるといけないからね」

赤くなったまま有利は素直にその手を握った。

「デートはともかく、コンラッドと一緒に出掛けるのは楽しいから」

「それをデートって言うんですよ」

にこやかにコンラッドは笑いかけた。なんだか恥ずかしくて、有利は次の出店へとコンラッドを引っ張っていく。半分ほど見てまわるとちょうどお昼時。近くの食堂に入り、空いていた奥のテーブルにつく。囲いがあるため周りの人から見られることはない。コンラッドおすすめの下町料理を楽しみつつ、くつろいでいた頃、先程のコンラッドの部下が食堂に入ってきた。辺りを見回している。

「ねぇ、あの人、コンラッドのこと探してるんじゃないの?」

「参ったな、非番だと言ったのに」

「俺、ここで待ってるからさ」

「すまない、直ぐに戻るから」

さりげなく有利の頬を撫でてコンラッドは出入り口に向かって行った。

「やっぱ隊長さんは頼られてるよな」

自分の知り合いが皆から慕われてて、頼りにされていて、自分の事のように嬉しい。コンラッドが出て行ってから暫くして、急に店内がザワザワし始めた。

「何だ?」

有利の位置からでは店内を見ることが出来ない。そのうち「酒持ってこい」と大声が店内に響く。

「うーん、もしかしてガラの悪い人達が入ってきちゃったのかな。あっ、おばさん、どうしたの?」

通りかかった女主人を引き留める。

「あら、顔出してると危ないわよ。あなたも早くここから出た方がいいわ」

席を立ち店内を覗くと確かにガラの悪い一行の他に客はいなくなっている。

「のようだけど連れが戻って来るんだ」

それにお金も持ってないから出るに出られない。

「きゃーっっ」

女の子の悲鳴が響く。

「ラタシェ!」

「いいじゃんかよ、ちょっと酌しろっていってるだけだろ」

「その手をお離しっ、うちはそういう店じゃ無いんだよ」

「はぁ?なんだ。俺達に逆らうなんていい度胸してんなババァ」

男が手を振り上げたと同時に有利は手元にあったコップを男に向かって投げつけた。顔面ヒット!日ごろの練習の成果だ。

「誰だっ!」

一斉に視線が注がれる。後悔先に立たずと短い人生の中、何度も経験しているのに全くいかされていない。しかしここで引き下がるわけにはいかない。

「いい度胸してんな、ガキっ」

「そっちこそいい大人がなにやってんだよ。女の子が嫌がってんだろっ。その手を放せよ」

男は三人。その内の一人がワザと女の子を引き寄せ、腰に手を回す。

「いやっ」

「へへっ放さなければどうすんだい」

ムカムカムカ。つかつかと有利は男の側に行き、そのむこうずねを蹴りあげた。

「いってぇっっ」

手が放れた隙に女の子が女主人のもとに駆け出しいく。

「小僧っっ」

もう一人が有利の胸ぐらを掴んで持ち上げるとその勢いでフードが落ちる。その髪の色を見て、女主人と女の子が息を呑んだ。

「ほぅ、瞳も髪も真っ黒だ。こゃ高く売れるぜ」

どうやら魔族でも知識には乏しい奴ららしい。魔族の土地でしかも側に血盟城。双黒の魔王のことをこの町の者なら知らないわけがない。

「放せよっバカ力っ」

ジタバタ足を動かすけど効果はなし。突然、有利を掴んでいた手が緩んで、有利は尻餅をついた。

「痛いっ」

女主人が長い棒を持って、男の背中を叩き、有利をかばうように前に立ち塞がった。

「早く逃げて。ラタシェ、無事お連れするんだよ」

ラタシェと呼ばれた子は有利を立ち上がらせた。

「こっちへ」

有利を引っ張り裏口へ向かおうとする。

「駄目だよ、オバサンがっ」

「私達の事より魔王陛下に何かあれば申し訳が立ちません」

「申し訳なんて立たなくていいよ、そんなのっ」

店内でガッシャンと大きな音がして、有利はラタシェの手を振り払って店へ戻った。テーブルと椅子は倒され、女主人が壁にもたれ倒れていた。店の中の様子に、一気に頭に血が上る。

「何だ、ワザワザ戻ってきてくれたのか、探しに行く手間が省けたね。ありがとさんよ」

有利は静かに女主人に近付いていく。

「おいおい、どこ行くんだよ」

有利を掴もうとした男が弾かれたように吹っ飛んで壁に叩きつけられる。他の二人が身構えた。

「何しやがったっっ」

有利は振り向きもせずに女主人を抱き起こす。

「...陛下、逃げて下さい」

「ごめん。俺のせいで…」

有利はユックリ立ち上がり男達の方に向き直した。ゆらゆらと怒りのオーラが昇り立つ。

「他人の迷惑省みず、傍若無人な振る舞い。ましてやか弱い女子供に暴力を振るうなど男の風上にもおけぬ。血を流すことは本意ではないが貴様らの行い許しがたし。よって......お主らを切るっ」

ガタガタと窓ガラスが揺れ始め、大きな音と共に割れ、空中に集まると何やら形を作っていく。

「駄目だっ陛下っ」

有利は店内に入ってきたコンラッドをちらっと横目で見たがそのまま魔力の放出を止めようとはしなかった。

ガラスの破片が店の中を飛び回り、地面の揺れが大きくなる。立っていることも難しい位だ。魔族の土地で有利程の力の持ち主が暴走してしまえばこのあたりは壊滅的な状態になる。硝子の龍は中心で腰を抜かしている三人を睨みつけ大きく口を開けると襲いかかった。

「ユーリッッ」

コンラッドがその前に飛び出す。いくかの破片がコンラッドを切り裂いたが、龍の攻撃は寸前で止まった。

「何故、悪者の味方をする」

「違う。このままここで力を使い続けたら、この店まで壊れてしまう。それどころか眞魔国の民さえ危険にさらすことになるっ」

有利の目が細まった。

「それは本意ではない」

有利は腰を抜かしている三人を睨みつけた。

「お主ら、命拾いをしたな。二度とこの様なことを起こさぬよう改心いたせ」

へへーっとばかりに三人はふれひす。地面には散らばった硝子の破片が「正義」の文字を形どっていた。コンラッドはほっと胸をなで下ろす。

「コンラッドっ」

意識が普段の有利に戻り、コンラッドの側に駆け寄ってくる。

「ゴメン、俺またいつものやっちゃって。大変だ、血が出てる」

「大丈夫です、かすり傷ですから舐めていれば治ります。陛下の手が汚れますから」

バタバタと店内に兵士たちが入ってくる。コンラッドは有利のフードを被りなおさせ、店内の騒ぎは中央で腰を抜かしている三人の仕業だと説明しにいった。

「あの、陛下」

ラタシェに支えられて女主人が話し掛けてくる。

「ごめんよ。店は必ずもと通りにするから。体は大丈夫?」

「そんな、私どもにその様なお言葉」

「ああそうだ、お願いがあるんだ」

「私に出来ることがあれば」

「俺がここに来てたことは内緒にして欲しいのと連れの治療をしたいので部屋を借りたいんだ」

「わかりました。部屋は隣に私共の宿がありますので今ラタシェに行かせます」

「ありがとう。でもオバサンが先に治療をしないと」

「ありがとうございます」

頭を下げる女主人に慌ててしまう。

「そんな、頭下げないでよ。俺のせいなんだから」

コンラッドが中央の悪者三人に何か話してから有利のもとに近付いてきた。おそらく先程の有利の行動の口止めだろう。さっきまでいきがっていた男たちは顔面蒼白になっている。

「後は兵士に任せました。陛下はお怪我はありませんでしたか」

「俺は大丈夫。こっちに来てコンラッド」

有利はコンラッドの手をとると裏口から出ていく。

「へ、陛下?」

裏口でラタシェが待っている。

「こちらです」

ラタシェの後に続いて部屋の二階に入っていく。

「今日は他に宿泊のお客さんもいません。汚い部屋で申し訳ないのですが」

「全然そんなことないって。むしろ俺の部屋より広くて綺麗なぐらいだよ」

「ありがとうございます。いま薬箱を持ってきますね」

ラタシェは部屋を出ていく。

「陛下?」

「はい、座ってコンラッド。そのままにして破傷風になったら大変だよ」

ラタシェが薬箱を持ってきてくれる。

「ありがとう」

「ではごゆっくりなさって下さい」

お辞儀をしてラタシェはでて行った。有利は薬箱から消毒液をガーゼに含ませた。

「ちょっとしみるよ」

コンラッドの前に立ち、顔にガーゼを当てる。コンラッドの眉が少しだけしかめられた。拭いたあとのガーゼに血がこびりつく。

「本当にごめん。俺がちゃんと力を制御出来てればコンラッドが怪我をしなくて済んだんだ。あの店だって俺のせいでボロボロになっちゃって。後先構わず飛び出してっちゃうから周りに迷惑ばかりかけちゃうんだ」

「陛下、陛下が行った事を誰も迷惑だなんて思っていないよ。お店の主人は娘を助けてくれたととても感謝していた」

「でも…」

「後先考えないで行動しても、その時、ユーリが正しいと思った行動だし、もしもそれで大変な事態になったとしてもその時は俺達が一緒に何とかするよ。今までだってそうだったろ」

「…うん」

「皆、陛下が勇気ある行動を、民や国の事を考えた行動をするからついていくんだ。だから悩まないで」

「でも俺の行動で誰かが怪我をするのは嫌だよ」

有利がコンラッドの頬の傷口に触れる。

「わかってる。けどそれ以上に皆、陛下に怪我をさせたくないんだ」

「もっとこの力をコントロール出来たら、ちゃんと皆を傷付けずに守ることができるかな。俺、良い王様になれるかな」

コンラッドは有利の手を握り締めた。

「もう充分良い王様だよ」

「ありがとう」

照れながら有利が微笑む。

「じゃ、消毒しなくちゃな」

まだ握り締められた手を引こうとするがコンラッドはその手を握ったままだ。

「もう大丈夫だよ。でも治療してくれるんだったら」

グイッと有利を引っ張りその腰に手を回して引き寄せた。

「舐めてくれたすぐ治るんだけどね」

「なっ、なっ」

有利は真っ赤になって動揺している。その仕草が可愛くてぷっと吹いてしまう。

「冗談だよ、ユーリ」

「うーっ」

しかし有利は赤い顔のまま唸りながらコンラッドに顔を近付けて頬の傷口をペロッと舐めあげた。

「消毒」

「じゃあここも」

有利の項に手を回してコンラッドは有利が何かを言い出す前にその唇を塞いだ。腰と項を引き寄せられて固定されているので有利はコンラッドのキスから逃れられずにそのまま舌を受け入れる。

「ふ…はぁ…ん」

足の力が抜けて有利は体をコンラッドに預ける形になる。唇を離すと熱い吐息が有利の口から洩れた。

「っーか、何すんだよっ。大人しく治療されろっての」

真っ赤になってうるんだ瞳で怒られてもその姿も可愛くて堪らない。

「ユーリが側に居てくれればすぐ治るよ」

頬にキスしてそのままベットに有利を押し倒す。

「ちょっとコンラッドっ、まさかここで、その」

「ダメ?」

「ダメ?ってここ人ん家じゃないかっ!」

「んー確かに。けど」

「けど?」

「暫く誰も来ないだろうし、ユーリと二人きりになるなんて久し振りだから......我慢できない」

耳元で囁かれて腰が砕けそうになる。コンラッドが言うとおり血盟城の中では中々二人きりになれる時がなかった。日中はギュンターがつきっきりだし夜はヴォルフがベットに忍び込んでくる。

「でもユーリが嫌なら無理強いはしないよ」

「…ずっりぃ」

首筋に唇が滑っていく。ギュッと有利は目をつむったが、反対に触れてくる箇所に意識が集中してしまい、触れられる箇所が熱をもっていく。そしてざわざわとむず痒い様な感覚が湧いてくる。しかしコンラッドの動きが止まり、ふっと体が軽くなった。目を開けるとコンラッドが体を離して有利を見つめていた。本当に無理強いするつもりはないようだ。

離れられるともっとコンラッドに触れてもらいたくて、熱を求めてしまう。ずっと我慢できなかったのは有利も一緒だ。

「ずっりぃよ、コンラッド」

もう一度有利は言ってコンラッドの首に手を回すとコンラッドはその体を抱き締めた。

「好きだよ、ユーリ」

「.....俺も」

有利がコンラッドの背中に手を回すとそれが合図のようにコンラッドが唇を重ねてきた。

 

 

 

身支度を整えて、部屋からでる。部屋を借りた礼を言おうと有利は女主人を探しに店の中へ入った。

「ゆっくり休めましたか?」

大分片付いた店内から女主人が有利を見付けて近寄ってくる。まさか違う意味でのご休憩をさせていただいたとは言えるはずもなかった。

「あ〜うん、どうもありがとう。店内、暫くは使えないね」

心が痛む。

「明日の昼には窓ガラスが入るからもう夜から商売は出来ますよ、気にしないで下さいな。先程陛下とご一緒だった方が手配してくださいました。ありがとうございます」

コンラッドだ。こういう事のフォローもちゃんとしてくれるから魔王陛下としての株が上がる。

「本当にごめんよ。それじゃ、俺、もう行かなきゃ」

「また遊びに来て下さいね、陛下」

「ありがとう。でも内緒にしてね」

女主人はウインクをして見送ってくれた。少し先の道でコンラッドが馬を連れて待っていてくれている。

「お待たせ」

「もういいですか?」

「うん。なぁ、ありがとな」

馬に股がりながら礼を言う。

「何がですか?」

「お店のフォローちゃんとしてくれたろ」

「ああ、だって思いがけず素敵な時間をいただきましたからね。ああいうハプニングならたまにはいいかな、ねっ、陛下」

耳元でささやかれ、その素敵な時間を思い出し有利は赤くなった。そうだなと素直に同意も出来ず、

「陛下って呼ぶな、名付け親」

と何時ものお決まりの台詞を吐く。

「つい癖で」

くすっと笑い、こちらもお決まりの台詞。

「ギュンターが心配するから急ぎましょう」

「だな」

馬を城に向け走らせる。城では相変わらずギュンターが叫んでいたようで城へ戻った有利はギュンターをなだめるのに一苦労だった。

 

今はまだへなちょこだけど皆のために立派な王になろう。けどもしくじけたら支えてくれよな。有利は血盟城のバルコニーから眞魔国を見下ろして深呼吸した。

end

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