金髪、碧眼の美少年。しかも前魔王の三男坊。正真証明、元王子様である。
なのに…

「なんで俺の部屋の、しかもベットの中にいるわけ?」

又も寝室に入って来て、ベットを占領している。確かに間違ったとはいえプロポーズしてしまったのは有利である。でも、後から取消したし(却下されたが)大体男同士でどうしろと言うのだ。

「これが女の子だったら…俺まだまっとうな人生歩んでたのに」

すでに魔王という職種はまっとうではない筈なのだがそれは棚あげである。

「はぁ…」

上着と毛布を持ち出して廊下へ出る。有利は上の階にあがり大きな装飾がしてある扉を開けた。普段から静かなこの部屋は月明かりを浴びて一層静まりかえっている。本棚が壁一面に並びハシゴを使わないと取れない位置までところ狭しと本が並んでいた。物音1つしない静かな空間。学校の図書室だって市立の図書館だって殆んど利用したことないのに血盟城の中でも有利のお気に入りの場所の一つ。
といっても有利の目的は本を読むことでなくここで一晩過ごすこと。窓辺に近寄り椅子を動かして簡易ベットを作る。そこに毛布にくるまりゴロンと横になった。当たり前だが背中が痛い。しかも寝返りをうつと落ちそうだ。何かいい方法がないかとガタガタと椅子を動かしていろいろ位置をずらしてみる。

「誰かいるのか?」

「わっ!ごめんなさいっ」

急に声をかけられ思わず謝ってしまう。

「ユーリ?こんな遅くに何してるんだ」

「あーびっくりした。コンラッドこそ」

「俺は見回りして部屋に戻る途中だったんですよ。そしたら図書室から音がするから」

「やっぱり図書室は静かに使わなくっちゃだよな」

コンラッドは窓際に並べられた椅子と持ち込まれた毛布を見つめる。

「ヴォルフがまたベットを占領してるんですか?」

「ほんと安眠妨害なんだよな。寝相が良ければまだしも何度ベットから蹴落とされてることか」

くすっとコンラッドは笑い、窓際の椅子を片付け始めた。そして有利の手から毛布をとる。

「俺の部屋へ来ますか?」

 

「あっ、サンキュ―」

コンラッドから温かいミルクを手渡される。

「あんなところで一晩過ごしたら風邪を引くよ」

「ん―違う場所探さなきゃ」

ミルクを飲んでいた有利は大きく伸びと欠伸をする。

「眠い?」

「ここんとこさぁ、やっと寝ついたかなぁと思ったらヴォルフにベットから落とされて睡眠不足なんだよ」

「ここで寝ていいよ」

「コンラッドは?」

「いくつか空いてる部屋はあるし、何だったら俺が図書室でも大丈夫だから」

「駄目だよダメ!俺がコンラッドのベット占領して、コンラッドが他行くんじゃ。俺が部屋戻るよ」

「でも、眠れないんでしょ」

すると有利はベットに滑り込むと端によりパンパンと空いてる場所を叩いた。

「寝相、いいだろコンラッドは」

有利の行動にちょっと驚いたあとくすっと笑いコンラッドは部屋の明かりを落として有利の隣に入り込む。

「ベットがデカイから大丈夫だな」

「俺を蹴らないで下さいね」

「約束できないけど」

「お休みユーリ」

「お休みコンラッド」

暫くすると有利の規則正しい寝息が聞こえてくる。寝る前に飲ませたホットミルクの効果もあるのだろう。

「ん…」

寒いのかもそもそと有利が動きコンラッドの側に寄ってきて丸くなる。コンラッドは有利の頭の下に腕を入れて軽く有利を抱き締める。何よりも大切な宝物。この手で何があっても必ず守り通す。

「むにゃ、もぉ食べらんない」

コンラッドは有利のオデコに唇を寄せる。

「ん…コン…ラッド」

「はい」

しかし返事はなく有利はコンラッドにすりよって頭を肩に乗せてきた。寝言のようだ。

「いい夢を」

コンラッドも目をつむるとすぐに眠りにおちていった。



有利が目を覚ますと隣にいた筈のコンラッドは既に着替を終えてベットに腰かけていた。

「おはよう」

「おはようございます。良く眠れましたか?」

「うん。久々にぐっすりって感じ。枕があってたのかなぁ」

伸びをする有利を優しい瞳が見つめる。

「はい、これ」

有利の手に小さな銀の鍵が渡される。

「これ?」

「この部屋の鍵だよ。俺がいない時でもこの部屋で寝てもいいから」

有利は鍵とコンラッドの顔を交互に見つめる。

「もらってもいいの」

「この城はユーリの物だしね」

「でもさっ、プライバシーの侵害とかってなっちゃうし」

「ユーリに見られて困るような物はないよ」

「ホントにいいの?」

こくっとコンラッドが頷くと有利は満面の笑みで鍵を握り締めた。

「コンラッドの物は俺の物、俺の物は俺の物。とか言ったらジャイアンみたいじゃん」

「でもユーりは俺のものだから。今日も走りに行くんでしょう」

「うん」

「じゃあ着替えが出来たころ部屋に迎えに行くよ」

有利はコンラッドの部屋をでて自室に向かう途中足を止める。

「さっきコンラッド、何て言ってた?」

普通の会話の中、何か物凄いことをサラリと言ってのけていた。

『でもユーリは俺のものだから』

頭の中にさっきの言葉が蘇り、有利は真っ赤になった。

「よく…さらっと言えるよな恥ずかしげもなく」

赤い顔のまま廊下を歩くがついにやけてしまう。有利はポケットの鍵をぎゅっと握り締めた。

 

「ユーリっ、最近一人でどこかに行っているようだがいったいどこに行ってるんだ。城内といえど危ないじゃないか」

「心配性だな〜。兵もいっぱいいるし大丈夫だよ」

「大体どこに行っているんだ」

「一番....安全な場所かな?」

満面の笑みで有利は答えるのであった。

 

Fin

さらっとものすごい台詞を言ってしまうコンラッドは心底たらしだなぁと思います。
コンラッドのベットでぐーぐー寝る陛下。いつまでも安全だと思うなよっ!

2005/12/24

ウインドウを閉じてください。

 

 



inserted by FC2 system